二月の冷たい空気が鼻の奥をつんと刺す朝、スマホの画面に並んだ検索候補を見つめている。
- 「女性用風俗」
- 「女風 体験」
- 「女風 初めて」
指が勝手に文字を打ち込んでいた。
いつからだろう、こんなことを繰り返すようになったのは。
十日前の獅子座満月の夜、あの丸い光を窓越しに見上げたとき、胸の底にずっと沈めていたなにかがぐらりと動いた感覚があった。
「自分に正直になれ」と言われている気がして、それが嬉しいような、怖いような。
あの夜から、わたしの検索履歴はずいぶん正直になってしまった。
これは、誰にも見せるつもりのなかった日記です。
星の流れに背中を押されるようにして、自分の奥にある渇きと向き合い始めた、ある女のめちゃくちゃに正直な記録。
シークレットモードの画面と、水瓶座の冷たい風
水瓶座のシーズンに入ってから、空気の質が変わった。頭が冴えるような、覚醒を促されるような、そういうピリッとしたエネルギーが漂っている。
いつもなら「考えすぎないで寝よう」と蓋をしていた感情が、今月に入ってからやけに表面まで浮き上がってくる。
水星のプレシャドウが始まったのも関係しているのか、日常の歯車がほんの少しずれている感覚が続いている。
獅子座の満月が照らし出したもの
二月二日の獅子座満月。
スノームーンと呼ばれるその月が、ベランダの物干し竿を青白く照らしていた。
洗濯物を取り込みそびれたまま、わたしはスマホの小さな光と月明かりの間で、女風の体験談を読んでいた。
ある女性が書いていた。「セラピストの手が背中に触れた瞬間、自分がどれだけ息を止めて生きていたか分かった」と。
そこまで読んで、肋骨の内側がぎゅうっと締まった。
空気を吸おうとしたら、喉の手前で引っかかって、うまく呼吸ができなかった。
獅子座の満月は「自分を隠すな」と迫ってくる。ふだんは見ないふりをしている欲求を、月の光が容赦なく照らし出す。
わたしが本当に欲しいものは何なのか。頭ではなく、体の深いところが求めているものは。それを直視するのがこんなに怖いとは思わなかった。
深夜二時の自問自答
布団の中でスマホの画面を閉じたり開いたりを繰り返す。料金表のページまで進んで、戻るボタンを押す。予約フォームを開いて、名前の入力欄を見つめて、閉じる。
わたし、なにやってるんだろう。
天井を見上げると、カーテンの隙間から月の光がうっすら差し込んでいる。エアコンの送風音だけが部屋に低く響いていて、自分の呼吸がやけに大きく聞こえる。まるでこの部屋にいるのが自分だけだということを、音が証明しているみたいだった。
三年以上、誰の手にも触れていない。
その事実が、砂の重さみたいに少しずつ少しずつ胸の底に溜まっていた。
日中は平気な顔をしている。でも夜になると、砂が胸を圧迫して、まともに呼吸ができなくなる。
バレンタインが近づく街と、わたしの体温
コンビニの棚がチョコレート色に染まっている。ピンクと赤のラッピングが視界を埋め尽くすこの時期、職場の同僚たちは「今年は自分チョコに奮発する」と笑っている。わたしも笑った。でも、わたしが本当に欲しいのはチョコじゃない。
明後日の土星牡羊座入りが気になって仕方がない
二月十四日、バレンタインのその日に、土星が牡羊座に入る。
このタイミングを知ったとき、鳩尾のあたりがざわついた。土星は甘えを許さない星だ。
けれど同時に、本当に必要なものだけを選び取る目を鍛えてくれる。牡羊座は「わたしは」と宣言する場所。
そこに土星が入るということは、「あなたは本気で自分の人生を始める覚悟があるか」と問われている気がする。
海王星も先月から牡羊座に移って、百六十五年ぶりの新しいサイクルが動き出している。
冥王星は水瓶座で社会の前提をひっくり返し続けていて、四月には天王星が双子座に入る。
時代の地殻変動が起きている。その巨大な流れの中で、わたし個人の小さな渇きなんて取るに足りないもののはずなのに、それでも体は正直に訴え続ける。
触れてほしい。温もりが欲しい。認めてほしい。
ソロバレンタインという名の自己防衛
帰り道、デパ地下でひとりぶんの小さなチョコを買った。
ゴディバの、金色のリボンがかかったやつ。
レジで「プレゼント用ですか」と聞かれて「自分用です」と答えた。

