水問題、封筒問題に続いて、今度はDM問題。
女風って予約の前にセラピストにDMを送る文化があるらしい。
何を書けばいいのかわからなくて、メモ帳に下書きしては消す夜が続いている。
送らなくてもいい、でも送ったほうがいい。この曖昧さが、いちばん怖い。
予約の前にDM? そんなルールがあるなんて
封筒問題を調べ終えて、もうこれ以上は調べまい、と思っていた。
水の話、封筒の話。まだ利用したこともない女風の暗黙ルールを二つも知ってしまった。もう十分だ。あとは予約するだけ。そう思っていたのに。
その夜、布団の中でXを開いたら、あるユーザーさんの投稿が目に飛び込んできた。
「初めての女風、予約前にDM送ったほうがいいって聞いたんだけど、何書けばいいかわからなくて3日経った」
え。DM?
予約する前に、セラピストに直接メッセージを送るの?
「女風 DM 送り方」で検索してしまった夜
また検索してしまった。「女風 DM問題」「女性用風俗 DM 送り方」。
指が勝手に動いている。もう止められない。
出てきた投稿を読みながら、少しずつ状況が見えてきた。
女風では、予約サイトやお店の予約フォームとは別に、XのDMでセラピストに直接連絡を取る文化があるらしい。
予約前の挨拶みたいなものだという人もいれば、事前に相性を確認するためだという人もいる。
「DM送ってくれると安心します」というセラピストさんの投稿に、いいねが300件以上ついていた。
300件。みんなそういうものだと思ってるのか。
水問題で2時間TLを遡ったあの夜を思い出す。あのときもそうだった。
「え、そんなルールがあるの?」から始まって、気づいたら深夜2時。今夜もたぶん、同じパターンにはまっている。
何を送ればいいのか、全然わからない
DM送ったほうがいいらしい、ということは理解した。
じゃあ何を書けばいいのか。ここで完全に手が止まった。
SNSの投稿をいくつか漁ってみると、「初めまして。○○さんの投稿を見て気になっています。近々お会いできたら嬉しいです」みたいなテンプレがちらほら出てくる。
これでいいの? これを、知らない男の人に送るの?
画面を見つめたまま5分くらい固まっていた。
私はそもそも、知らない人にメッセージを送ること自体が苦手だ。
LINEの友達追加ですら緊張するタイプなのに、女性用風俗のセラピストにDMを送る。
しかもXで。しかも内容は「会いたいです」的なこと。
無理じゃない?
DM送る派と送らない派がいるらしい
もう少し調べてみると、全員がDMを送っているわけではないこともわかった。
「予約フォームから直接予約した。DMは送ってない」という投稿もある。
「お店を通して予約するのが正式なルートなので、DM不要です」と書いているセラピストさんもいた。
ちょっとだけホッとした。送らなくてもいいケースもあるんだ。
でもすぐに不安が戻ってくる。
「DM送ってくれたほうが、当日リラックスして会えます」「事前にやり取りがあると、お互いの温度感がわかるので助かります」という投稿が次々に出てくるからだ。
送らなくてもいい。でも送ったほうがいい。
この「どっちでもいいけど、送ったほうがベター」みたいな空気が、いちばん厄介だと思う。
明確に「必須」と言われたほうがまだ楽だ。
「任意です」と言われると、任意の範囲で最善の選択をしなきゃいけない気がして、かえって身動きが取れなくなる。
会社の飲み会の出欠と一緒だ。「自由参加です」のほうが「全員参加」より判断に迷う、あの感じ。
ふと、スマホの通知音が鳴ってビクッとした。LINEだった。
職場の後輩からのスタンプ。「お疲れ様です」のクマ。
後輩は今頃、彼氏と過ごしてるんだろうな。私は布団の中で、女風のDMの送り方を調べている。この温度差が、じわじわと胸に染みる。
女風のDM問題がSNSで荒れる理由を調べてみた
DM文化があること自体はわかった。
でも、なんで「DM問題」としてSNSで議論になるのか。そこがまだ掴めていなかった。
もう少し深く掘ってみる。
荒れるパターンはいくつかあるらしい。
まず、「DMの内容が長すぎる・重すぎる」問題。初めてのDMで自分の身の上話を長文で送ってしまうユーザーがいるらしく、セラピスト側から「初回のDMは短めにしてほしい」という投稿が定期的に上がっている。
次に、「DM返信が遅い・来ない」問題。
送ったのに既読スルーされた、Xは更新しているのにDMの返信が3日後だった、という不満がユーザー側から出る。
一方でセラピスト側は「1日に何十件もDMが来る。全員にすぐ返信するのは物理的に無理」と。
それから、「DMで予約確定だと思ってたのに、正式な予約が入ってなかった」という行き違い。
これは双方にとって困るやつだ。
セラピスト側にも事情がある
ある投稿が目に留まった。セラピストさんが書いていた。
「DMは嬉しいです。でも『初めまして』だけのDMが1日に10件来ると、正直どう返していいかわからなくなる。できれば、何を見て気になったのか、予約希望なのか、少しでも書いてくれると助かります」
なるほど。セラピスト側からしたら、「はじめまし」だけのDMは返しづらいのか。
でも、ユーザー側からすると、その「少しでも書いてくれると助かる情報」が何なのかがわからない。
何を書けば正解なのかがわからないから、結局「初めまして、会いたいです」になってしまう。
またここでも、正解がわからない問題にぶつかっている。
そこからさらに投稿を遡っていて、ひとつ知らない言葉に出会った。
「打診」
予約前にDMでスケジュールを確認することを、この界隈では「打診」と呼ぶらしい。
「〇月〇日の〇時から120分あいてますか?」みたいな連絡。
なるほど、ただの挨拶じゃなくて、予約調整の実務的なやり取りなのか。
読み進めてわかったのは、女風のセラピストは本業を別に持っている兼業の人がほとんどだということだ。
会社員だったり、学生だったり、別の仕事をしながらセラピストをしている。だから当日の1時間前に「今日空いてますか?」とDMしても、対応できない人が多い。
数日前から打診して、お互いのスケジュールを擦り合わせるのが基本らしい。
そう考えると、「はじめまして」だけのDMが返しづらい理由がもう一段深く見えてくる。
セラピスト側からすれば、具体的な日程が書いてないDMは、返しようがないのだ。嬉しいけど、そこから予約に繋がらない。
ある投稿で「『会いたいです』だけのDMは結局予約に繋がらないことが多い」と書いているセラピストさんがいて、妙に納得してしまった。
さらに踏み込んだ投稿も見かけた。「DMは予約に関するやり取りには返信するけど、ただの雑談DMには返さない。予約時間以外は無給なので」と書いているセラピストさん。
予約時間以外は無給。その一言にハッとした。
考えてみれば当たり前だ。兼業でやっている人にとって、DMの返信は仕事の時間外にやっている作業だ。
予約に繋がるDMならまだ意味があるけれど、雑談の相手をするのは完全にサービス残業になる。
一方で、「将来の予約に繋げるために雑談DMにも対応したほうがいい」と言っているセラピストさんもいた。
それはもう営業活動だ。セラピスト目線で見ると、DMひとつとっても営業判断が入っている。
夜のお仕事ってこういう感じなのか。でも兼業が多いなら、そこまでガツガツ営業する必要もないのかもしれないし。
なんだか、ユーザーの私が思っていたよりずっと複雑な事情がセラピスト側にはあるんだな、と思った。
別のセラピストさんは「DMなしで予約してくれて全然OKです。お店の予約フォームが正式な導線なので」と書いていた。
でもその同じ人が別の投稿で「DMくれた方とは、当日会ったときの空気が全然違う」とも書いていた。
結局どっちなの。
OKだけど、あったほうがいい。いいけど、なくてもいい。でもあると嬉しい。
この曖昧さが、女風のDM問題をずっと燃やし続けている理由なんだと思う。
ユーザーは「送ったほうがいいの? 送らなくていいの?」と迷い、セラピストは「送ってくれていいけど、内容による」と本音を漏らし、そのズレがSNSで可視化されるたびに議論が再燃する。
水問題も封筒問題もそうだった。「正解が一つじゃないから、毎回誰かがモヤモヤする」。この構造、もう3回目だ。
結局まだ送れてない
DMの送り方を調べ始めて、もう何日経ったんだろう。
メモ帳アプリに下書きを3回書いて、3回消した。
1回目は丁寧すぎて就活のエントリーシートみたいになった。「突然のDM失礼いたします。○○と申します。△△様のXの投稿を拝見し」って、これじゃ面接だ。
2回目はカジュアルにしすぎて、「気になってます!ぜひお会いしたいです!」って、なんだかナンパみたいで嫌になった。
3回目は途中まで書いて、「そもそも私は何がしたいんだっけ」と根本的なところに立ち戻ってしまって、メモ帳を閉じた。
お風呂に入りながら天井を見ていた。
考えてみれば、DMを送ること自体が目的じゃない。予約して、行って、サービスを受ける。それが目的だ。DMはその手前のステップでしかない。
なのに、このステップで詰んでいる。
水問題、封筒問題、そして今度はDM問題。一つ知るたびに、「まだ知らないルール」が芋づる式に出てくる。
知ればくるほど不安になるし、でも知らないまま行くのはもっと怖い。
こっちがDMを送る前に、向こうからDMが来ることもあるらしい。
営業DMっていうやつ。それはそれで、また別の問題があるみたいだけど、今の私にはまだ先の話だ。
まず自分から1通、送れるかどうか。そこだ。
スマホを裏返して、枕の下に突っ込んだ。
明日こそ送ろう、と思いながら目を閉じる。たぶん明日も送れない。
女風のDMの送り方なんて、利用する前から悩んでどうするんだろう。
でも悩んでいるのは私だけじゃないはずだ。さっきの投稿の人も、3日経ってまだ送れてなかった。
この世界の暗黙ルール、どこまで続くんだろう。水、封筒、DM。次は何が出てくるのか、正直ちょっと怖い。
でも、怖いのに調べるのをやめられない自分がいる。
たぶんそれは、怖さよりも「知りたい」が勝っているからだ。
知って、納得して、自分のタイミングで踏み出したい。急かされるんじゃなくて、自分で決めたい。
だから今夜も調べている。検索履歴を消しながら。

