はじめての女風はデートコースとホテルコースどっち?

はじめての女風はデートコースとホテルコースどっち?

ドトールのテーブルに肘をつきながら、コース一覧のページを何回スクロールしたかもうわからない。

デートコース、ホテルコース、お泊まりコース。

文字だけ見ればただのメニューなのに、「どれにしますか」を自分に問いかけた途端、指が止まる。

私はどこまで求めていいんだろう。その問いがいちばん重くて、アイスラテの氷はとっくに溶けていた。

目次

コース一覧を開いたら、急にリアルになった

コース一覧を開いたら、急にリアルになった

仕事帰り、駅前のドトールに寄った。

家に帰りたくなかったわけじゃないけど、あのサイトを自分の部屋で開くのはなんとなく嫌で、人がいる場所のほうがまだ冷静でいられる気がしたのだ。

コートを脱いでアイスラテを頼んで、席に着いて、スマホを開く。

料金は確認した。セラピストのプロフィールも見た。口コミも読んだ。安全性も調べた。

順番としては次に来るのが、「じゃあ、どのコースにするの」という話で。

タップした先に、コースの一覧が並んでいた。

デートコース。ホテルコース。お泊まりコース。それぞれの時間と金額と、ざっくりした内容。

今までは数字とか文字情報だったものが、コースという「選択肢」になった瞬間、急にリアルになった。

これを一つ選んで、予約するということ。

まだ予約しないけど。しないけど、選ばなきゃ予約できない。

ストローの先を無意味に噛んでいた。歯型がつく。

デートコースなら、まだ「普通」に見える

デートコースなら、まだ「普通」に見える

デートコースの説明を読む。

セラピストと外で会って、カフェに行ったりご飯を食べたり、一緒に散歩したり。恋人と過ごすような時間を提供するコース。性的なサービスは含まれない。

これなら、ただお茶してるだけだ。

レンタル彼氏とかレンタルフレンドとか、そういうのに近い。外から見たら友達か彼氏とカフェにいる女にしか見えない。

安全だと思った。

でもすぐに、「私が欲しいのは安全じゃない」という声が頭の中に響いた。

ここまで調べてきたのは、誰かと一緒にカフェでラテを飲みたかったからじゃない。触れてほしかったからだ。

デートコースでお茶を飲んで、笑って、2時間過ごして、「じゃあ」って別れて、一人で駅に向かう帰り道。

想像しただけで、今より虚しくなる自分が見えた。

「ホテルコース」の文字を見て、冷房が急に効いた

「ホテルコース」の文字を見て、冷房が急に効いた

ホテルコースの説明に目を移す。

ラブホテルや自宅で、マッサージや性感サービスを受けるコース。

女性用風俗のいわゆる「本体」がこっちらしい。

知らない男の人と、ホテルの部屋に入る。

その文字列を頭の中で組み立て直したら、ドトールの冷房がいきなり強くなった気がした。腕に鳥肌が立って、コートを引き寄せる。

お泊まりコースもあったけど、さすがに初めてで選ぶものじゃないだろう。いきなり一晩はない。

だからデートかホテルか、あるいはその組み合わせか。

二択。いや三択。

コンビニのお弁当を選ぶのとはわけが違う。自分の身体にどこまで触れてもらうかを、自分で決めるということ。

施術の内容も少し書いてあった。オイルマッサージ、全身のリラクゼーション、性感マッサージ。「お客様のご希望に合わせて」とある。

ご希望。

私の希望って、なに。

マッサージだけでいいのか。もっと踏み込んだところまで求めているのか。自分でもはっきり言語化できない。

初対面の人に「ご希望は」と聞かれて、なんて答えればいいんだろう。「あの、触ってほしいんですけど、どこまでかは自分でもわかりません」とか言うのか。

考えただけで耳が熱くなる。

「どこまで」を自分の口で言うということ

口コミを思い出す。

「最初はマッサージだけにしてもらいました」という人がいた。「全部おまかせにしたら、ちゃんと様子を見ながら進めてくれました」という人も。

どこまでするかは自分で決めていい。嫌なことは断れる。途中でやめてもいい。

それは安心材料のはずなのに、裏を返せば、自分の欲求を自分で認めて、自分で選択して、自分の口で伝えなきゃいけないということで。

「このくらいまでお願いします」を初対面の男性に言う自分の姿が浮かんで、ラテのストローをまた噛んでいた。ぼろぼろ。歯型だらけ。

隣の席でノートパソコンを開いてる女の人が、こっちをちらっと見た気がして、慌ててスマホを伏せた。

体験談を読んで、少し呼吸が戻った

体験談を読んで、少し呼吸が戻った

検索窓に「女性用風俗 初めて おすすめ コース」と打った。

体験談がいくつか出てくる。

初回はデートコースだけにしたという人。最初からホテルコースを選んだ人。デートとホテルを組み合わせた人。

あるブログにこう書いてあった。「最初の1時間はカフェで話をして、緊張がほぐれたところでホテルに移動しました」。

デートとホテルを組み合わせるプランがある。

それを読んだ瞬間、胸のあたりが少しだけ緩んだ。

最初から全部決めなくていい。まずカフェで話をして、この人なら大丈夫だと思えたら先に進む。無理だと感じたらデートだけで帰る。

その「途中で判断できる」という余白が、こんなに安心材料になるとは思わなかった。

大学のとき友達と行った占い師に、「あなたは石橋を叩きすぎて壊すタイプね」と言われたことがある。あのときは「何それ」と笑ったけど、今の自分がまさにそれだ。叩きすぎて橋を渡る前に疲れている。

でもカフェで一回会って、それから決められるなら、橋を全部渡らなくてもいいのかもしれない。半分まで歩いて、揺れなかったらもう少し先へ。揺れたら戻る。

そういう使い方ができるなら。

金額のことが、また頭に浮かぶ

金額のことが、また頭に浮かぶ

デートコースだけなら120分で1万4千円くらい。ホテルコースは120分で2万円。

組み合わせたら3万5千円とか、そのくらいにはなるだろうか。

手取り22万の中の3万5千円。自由に使えるお金の、ほぼ全部。

頭の中で算盤をはじいている自分がまた出てくる。こういう計算を自然にしている時点で、もう「興味本位で調べてるだけ」ではないんだと思う。

でもデートだけで帰ったら1万4千円。それで「思ったのと違った」「物足りなかった」となったとき、1万4千円を払って後悔するのと、3万5千円を払って満足するのと、どっちがいいのか。

こういう損得勘定をしている自分が嫌になる。感情の話をお金で考えてる。でも考えざるを得ない。給料は有限だから。

ドトールの閉店アナウンスが流れた。

もう21時。2時間近くスマホを見ていたことになる。

検索履歴を開いて、一瞬迷って、今日は消さなかった。どうせ明日も同じことを調べるのだから、消しても意味がない。

帰りのホーム、答えが出かけて引っ込んだ

帰りのホーム、答えが出かけて引っ込んだ

駅のホームで電車を待ちながら考えていた。

デートコースかホテルコースか。その前に、予約するかどうかすら決まっていないのに、コースの比較をしている。だいぶ前のめりだ。

電車が来た。座席に座ってイヤホンをつける。音楽は再生しない。外の音を遮断したかっただけ。

もし仮に行くとしたら。

たぶん私はデートから入ると思う。いきなりホテルで二人きりは怖い。

でもデートだけで帰ったら後悔する。「もう少し勇気を出せばよかった」って、帰りの電車でたぶん泣く。

それはつまり、デートとホテルの組み合わせコースを選ぶということじゃないか。

なんだ。答え、出てるじゃん。

いや。出てない。出てないことにさせてほしい。

まだ調べてるだけだから。もし実際にこのコースを受けたらどんな感じなんだろう、とか、そういうのも全然わからないし。

それに、当日の準備のこととかもまだ何も考えてない。服とか、持ち物とか。

服。

下着。

ホテルコースを選ぶなら、初対面の男性に見られる下着のことまで考えなきゃいけないわけで。

そこまで思考が及んで、電車の窓に映った自分の顔がぼんやり赤いのが見えた。

隣の人に気づかれてないといいけど。

今日はここまで。これ以上考えると頭が壊れる。

でもたぶん明日か明後日には、服とか下着とか持ち物とか、そっちの心配を始めるんだろうなという予感がもうある

コースの話が終わったら次は準備の話。調べることが永遠に終わらない。

→ 次の日記:当日のこと考えたら、下着から悩み始めた自分が恥ずかしい

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