「頑張ってるね」って言葉より、誰かに頭を撫でてほしかった

「頑張ってるね」って言葉より、誰かに頭を撫でてほしかった

企画書を3回直して、やっと部長からOKをもらった水曜日。「よく頑張ったね」って言われて笑ったのに、帰りの電車で自分の顔が笑えてなかった。嬉しいはずなのに、身体が受け取ってくれない。私が本当に欲しかったものは、言葉じゃなかった。

目次

「よく頑張ったね」が胸に刺さった水曜日

企画書の修正を3回やり直した。

朝イチで出した初稿に赤が入って、昼前に直したやつにも赤が入って、15時の会議ギリギリに出した3稿目で、やっと部長が「うん、いいと思う」と頷いてくれた。

会議室を出たところで、部長が振り返る。

「よく頑張ったね。助かるよ」

周りにいた同僚も「さすがだね」って口々に声をかけてくれて、私は「ありがとうございます」って笑った。ちゃんと笑えたと思う。たぶん。

帰りの電車で、窓に映った自分の顔

定時を少し過ぎて会社を出た。水曜だからまだ週の真ん中で、電車は混んでいる。吊り革につかまって、ドアのガラスにぼんやり目をやったとき、自分の顔が映っていた。

笑ってなかった。

さっきまであんなに「ありがとうございます」って言ってたのに、会社を出た瞬間、顔から表情が消えてる。

「頑張ったね」って言ってもらえたのに。認めてもらえたのに。

なのに、胸のあたりがずっとざわついている。

嬉しいはずなのに嬉しくない、というのとも違う。嬉しかったんだと思う。頭では。ただ、身体がそれを受け取ってない感じがする。言葉が、皮膚の表面で跳ね返って、内側まで届いてこない。

家に帰ってから気づいたこと

コンビニで買ったサラダとおにぎりを、テーブルじゃなくてベッドの上で食べた。行儀が悪いのはわかってる。でもテーブルでひとりで食べると、空いてる向かい側の椅子が目に入るから。

お風呂に入って、ドライヤーで髪を乾かしながら、ふと気づく。

私が本当に欲しかったのは、「頑張ったね」って言葉じゃない。

誰かに、頭を撫でてほしかった。

「もういいよ、十分だよ」って、背中をさすってほしい。ただそれだけ。

その想いが、思った以上の重さで胸に落ちてきて、ドライヤーを持つ手が止まった。

言葉と体温は、まったく別のものだった

仕事の評価はもらえてる。人間関係もそこそこうまくやれている方だと思う。上司にも同僚にも、それなりに信頼してもらえてる。

でも、それとこれとは違うんだと、今日はっきりわかってしまった。

言葉で「認められること」と、身体で「安心できること」は、全然別のチャンネルなんだと思う。片方がどんなに満たされても、もう片方の渇きは消えない。

最後に誰かに触れてもらったのって、いつだろう。

元カレと別れたのが2年前。それから仕事に集中しようと決めて、実際に結果も出してきた。昇給もしたし、後輩の指導も任されるようになった。

でも夜、ベッドに入ると身体が冷えている。暖房が効いていないわけじゃない。芯のあたりが、ずっと乾いてる感覚。もう長いことそうだったのに、気づかないふりをしていた。

前にも書いたけど、会社では泣くのに慣れてしまった。トイレの個室で声を殺して、何事もなかったみたいに席に戻る。そういうことを繰り返してるうちに、自分の感情に鈍くなってたのかもしれない。

友達に「寂しい」と言ったら

一度だけ、友達に言ったことがある。「最近さ、なんか寂しいんだよね」って。

返ってきたのは「マッチングアプリやりなよ!」だった。

違うんだよなあ。

恋人が欲しいのとも、ちょっと違う。もちろんいたらいいなとは思う。でも今の私が求めてるのは、もっと手前にあるもの。人の体温。手のひらの重み。「ここにいるよ」って伝わる、ただの触れ合い。

でもそれを説明しようとすると、どうしても「重い人」になってしまう。25歳の正社員が「人肌が恋しい」なんて言ったら、ちょっと引かれるでしょ。

だから結局、「だよねー、アプリかー」って笑って流した。

…話がそれるけど、あのとき友達が飲んでたタピオカ、すごく美味しそうだったな。私はブラックコーヒーを頼んでいて、なんか自分って甘えるのが下手だなって、変なところで思った。タピオカくらい頼めばよかった。

夜のベッドで、クッションを抱きしめながら

端から見たら、たぶん「充実してる人」に見えるんだと思う。

25歳で正社員で、それなりに仕事もできて、友達もいて。先週は仕事帰りにデパートで新しいリップを買った。自分へのご褒美、ってやつ。でもあのリップ、まだ一回も使ってない。本当に欲しいものの代わりにはならなかった。

夜になると、いつもクッションを抱きしめて寝ている。

枕に顔をうずめて、誰かの匂いがするわけでもないのに、匂いを探してしまう。存在しない体温を求めて、布団の中で身体を丸める。

私、何やってるんだろう。

こういうことを誰にも言えないまま、また明日も「おはようございます」って笑う。部長に「頑張ってるね」って言われたら「ありがとうございます」って返す。それでいい。それでいいはずなのに。

頭は「大丈夫」って言ってる。

でも、身体が「もう限界」って言ってる気がする。

今日はそのことだけ、ここに書いておく。

もう少しだけ自分に正直になりたい。もしかしたら私には、人の手の温度が必要なのかもしれない。それが誰の手なのかは、まだわからないけど。

明日も仕事。木曜日。あと2日。

ベッドの右側は今日も空いてて、クッションだけが相手で、部屋には私の体温しかない。

つづく

>>次の日記:休日、ひとりでスタバにいると「何やってんだろ私」ってなる

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