また月曜日。誰にも触れられない生活がもう2年になった

また月曜日。誰にも触れられない生活がもう2年になった

日曜の夜、23時46分。明日のアラームをセットしようとして、指が止まった。

6:45。

この数字を見ると、毎回おなかのあたりがきゅっと縮む。身体が覚えてしまっている。月曜が来る合図。

また満員電車に乗って、「おはようございます」って口角を上げる。パソコンの前に座って、メールを返して、会議に出て、「お疲れさまです」って言って帰る。

その繰り返しが3年目に入った。

べつに仕事が嫌いなわけじゃない。たぶん。嫌いだったらとっくに辞めてる。辞める勇気がないだけかもしれないけど、それを考えるのも面倒だから、毎朝ちゃんと起きてる。

ただ、なんていうか。毎日がずっと乾いている。

目次

アラームの6:45と、数えてしまった2年

朝起きて、夜寝るまでのあいだに、誰かの体温を感じることが一回もない。

そのことに気づいたのは去年の冬だった。ふと「最後に誰かに触れたのっていつだろう」って考えてしまって。指折り数えて、やめればよかったのに最後まで数えて、2年近くになっていた。

2年。

文字にすると短い。でも体感ではもっとずっと長い。

最後のハグは別れた元彼だ。改札の前で、ぎこちなく抱き合った。もうたぶん二度とないってお互いわかっていて、それでも離せなかったあの数秒。彼のコートの匂いはもう思い出せないのに、腕の重みと温度だけがまだ肌に残ってる。

それから2年間、誰にも触れていない。

手も繋いでいないし、肩が触れ合ったこともない。ハグなんて当然。

こうやって書くと惨めだなと思う。25歳の女がひとりでこんなこと数えてるなんて。でも事実だから、もうどうしようもない。

40センチの透明な壁

友達はいる。少ないけど。会社の人ともそれなりにうまくやれていると思う。ランチは一緒に行くし、たまに飲みにも行く。

でも、誰かの隣にいても物理的な距離がある。

パーソナルスペースっていうやつ。みんなが無意識に保っている40センチくらいの見えない壁。あれが苦しい。

私だけがその壁の内側に入りたくて、でも誰もそこには来てくれなくて。自分から踏み込む勇気もなくて。

帰りの電車で、カップルが隣に座ってくることがある。彼女のほうが彼氏の肩にもたれかかっていて、彼氏はスマホをスクロールしている。なんてことない光景。ただそれだけの、どこにでもある夜の電車の風景。

それを見て泣きそうになった自分がいて、泣きそうになっている自分に引いている自分もいる。

なにこれ。

平日がこうなら休日はマシかっていうと、そんなこともない。土曜も日曜も、結局ひとりだから。

暗い部屋の「ただいま」

家に帰ると部屋は暗い。当たり前のことなんだけど、毎回一瞬だけ息を止めてしまう。

電気をつけて、コートを脱いで、手を洗う。「ただいま」を言う相手がいないから、代わりにテレビをつける。音がないと静かすぎて、自分の呼吸が聞こえて不安になるから。

ごはんはコンビニで買ったサラダとおにぎり。テーブルじゃなくてベッドの上で食べる。行儀が悪いのはわかってる。でもテーブルでひとりで向かい合うと、空いてる椅子のほうを見てしまうから。

お風呂に入って、髪を乾かして、スキンケアして、ベッドに入る。

スマホを開くとXのタイムラインに誰かの日常が流れてくる。彼氏に作ってもらったごはんの写真。友達との旅行のストーリー。推しのライブの感想。みんな、ちゃんと生きてる。

いいねは押す。押せる。でもそのたびに自分の生活の何もなさが輪郭を持ってくる。

ふと、実家で飼っていた犬のことを思い出した。

名前はコタロウ。柴犬の雑種で、私が中学生のときに来た子。あの子は私が帰ると全力で尻尾を振って、膝の上に乗ろうとしてきた。重くて迷惑だったけど、あの体温がいまこの部屋には何もない。

犬の話をしたかったわけじゃない。ただ、なんか急に思い出して、喉の奥がつまった。

慣れていくことが一番怖い

一番つらいのは、この生活に慣れ始めていること。

最初の半年くらいは寂しくて仕方なかった。元彼と別れたあと、毎晩枕に顔をうずめて泣いていた。涙の出ない日なんてなくて、朝起きると目が腫れている。

でも人間って慣れる。

1年経って泣かなくなった。2年経って、寂しいっていう感情すらぼんやりしてくる。ひとりでいることが普通になって、人の体温がなくても平気な顔ができるようになった。

それが一番怖い。

感じなくなっているわけじゃなくて、感じないようにしているだけだって、たぶん気づいてる。でも気づかないフリをしないとやっていけないから、蓋をして、鍵をかけて、その上にまた蓋をしている。

今日、会社で後輩の女の子が彼氏からもらったマフラーを嬉しそうに見せてきた。チェック柄のカシミヤ。「彼が選んでくれたんです」って頬を赤くしてる。

「かわいいね」って笑って返せた自分にほっとする。ちゃんと笑えた。

でも帰りの電車で思い出して、胸のあたりがぎゅっと詰まった。

あの子は誰かに選ばれている人で、私は誰にも選ばれていない人。あの子は彼氏にマフラーをもらって、私はユニクロで自分のマフラーを自分で買う。

べつにユニクロが悪いわけじゃない。ヒートテックは好きだし。でも、そういうことじゃなくて。

この日記を始めた理由

ちょっと話がそれた。

なんでこのブログを書き始めたかというと、誰かに聞いてほしかったから。

でも「誰か」がいない。友達にこんな話をしたら重すぎて空気が変わる。飲みの席で笑って「彼氏ほしいわ〜」くらいなら言える。

でも「誰かに触れてほしい」は言えない。

それって生々しすぎるし、相手がどんな顔をしていいかわからなくなると思う。「大丈夫?」って心配されるのも違う。「彼氏作りなよ」って返されるのはもっと違う。

本当に欲しかったものが何なのか、ちゃんと言葉にしたのはもう少しあとになる

でも本当は、この日記を書いている今も思っている。

誰かの手の温度を感じたい。背中をさすってほしい。「大丈夫だよ」って、言葉じゃなくて体温で伝わるようなもの。

書いてしまった。こんなこと、リアルでは絶対に口にできないのに、画面に向かうと指が勝手に打ってしまう。

とりあえず、明日も月曜。

アラームは6:45。

ベッドの右側は今日も空いていて、枕はひとつで十分で、部屋の温度は私の体温だけで成り立っている。

こんな毎日を、いつまで続けるんだろう。

わからない。でも今は、ここに書くことだけが唯一の出口になっている。

たいしたことは書けないと思う。ただ、どこにも出せなかったものをここに置いていく。

それだけの日記です。

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