先月の給料が振り込まれた朝、いつもの計算に新しい項目が加わっていた。
家賃、光熱費、食費。そしてもうひとつ。
女性用風俗の、月1の予約。
カレンダーに印をつけた空白の土曜日。
誰にも見えない「自分へのご褒美」が、3ヶ月目に入った。
給料日の翌週に、もうひとつの予定ができた
先月の給料日、いつもなら振り込まれた金額を見て、そこから家賃と光熱費と食費とカードの引き落としを引いて、残りを貯金にまわして、という計算をする。
今月もそうだった。ただ一つだけ、去年にはなかった項目が加わっている。
予約、という名前の支出。
女性用風俗の、月1回の予約。
スマホのカレンダーに、何も書いていない土曜日がある。その日に印をつけている。
アイコンは何もなし。誰かに見られてもわからないように、ただの空白の予定。
これが3ヶ月目になった。
「来月も来ますか?」にうなずいた日
最初は2回目を予約するかどうかだけで、何日も迷った。依存じゃないかって自分を疑ったし、またお金を使うことに罪悪感もあった。
でも2回目が終わったとき、セラピストさんに「来月もご予約されますか?」と聞かれて、ほとんど反射的に「はい」と言った。
迷わなかった。
あ、もう決まってたんだ、と思った。頭じゃなくて、身体が答えを出していた。
帰り道、駅までの道を歩きながら「月に一回か」と口に出してみた。
月に一回、美容院に行くのと同じ感覚。いや、美容院よりもう少し大事な何か。
そう思ったとき、ふと去年の自分を思い出した。
「自分へのご褒美」にコスメを買ったあの日。リップを1本買って、帰りの電車の中で紙袋を膝に置いて、なんとなく満たされない気持ちでぼんやりしていた。
あのとき私は、本当に欲しいものがわかっていなかった。
リップじゃなかったんだよね。
今ならわかる。
月に一回、何もしなくていい120分
3回目のとき、セラピストさんにこう言われた。
「今日はなにかしたいこと、ありますか?」
少し考えて、「特にないです」と答えた。
最初のころは、コースの内容とか、どこまでしていいのかとか、そういうことばかり気にしていた。
何をしてもらうのか、どんな流れなのか、事前に頭の中でシミュレーションして。
でも3回目ともなると、もうそういうのが薄くなってくる。
「じゃあ、ゆっくりしましょうか」
そう言って、照明を少し落としてくれた。
何もしなくていい120分。
仕事のことを考えなくていい。誰かに気を使わなくていい。LINEの返信もしなくていい。ただ横になって、触れてもらって、呼吸して、それだけ。
そんな時間が、月に一回ある。
お風呂に入ったとき、ふと思ったこと
この前、帰宅してお風呂に入っているときに、天井を見ながらぼんやり考えた。
私はこれを人に言えるんだろうか。
友達に「月1で女風行ってるんだ」って言える日が来るんだろうか。
たぶん、来ない。
でも、美容院に月1で通っていることを、わざわざ人に報告する人もいない。
ジムの月額を払っていることを、いちいち友達に相談する人もいない。
自分の心と身体のために定期的にお金を使う。それだけのこと。
そう思えるようになるまで、けっこう時間がかかった。
依存とは違う。毎日行きたいわけじゃないし、行かないと生きていけないわけでもない。
ただ、月に一回これがあると、残りの29日がちょっとだけ楽になる。
今月もがんばろう、と思える。
そういうものを見つけた、という話。
「ご褒美」って、こういうことだったのかもしれない
給料日のあと、自分へのご褒美にスイーツを買う、とか。高いシャンプーを使う、とか。
そういうのも嫌いじゃない。でもそれだけでは埋まらないものがあった。
今の私のご褒美は、月に一度、安心して力を抜ける場所に行くこと。
自分の身体に触れてもらいながら、何も考えない時間を過ごすこと。
情けない、と思う瞬間がゼロになったわけじゃない。予約のたびに少しだけ手が止まる。カレンダーに印をつけるとき、ちょっとだけ後ろめたさがある。
でも、それを上回る「必要だ」がある。
昼休みに会社の近くのコンビニでサラダチキンを買いながら、今月の予約日まであと何日だろうと数えている自分がいる。
別に毎日カウントダウンしているわけじゃない。ふとした瞬間に頭に浮かぶだけ。
来月の予約はもう入れてある。
いつの間にか、普通の予定になっていた
最初は「あり得ない」と思っていたことが、カレンダーの中の普通の一行になっている。
歯医者の予約、美容院の予約、そしてもうひとつの予約。
いつからこうなったんだろう。
わからない。でも、悪くない。
明日は月曜日で、また一週間が始まる。会社に行って、仕事して、帰ってきて、ご飯を作って、お風呂に入って、寝る。その繰り返し。
でも来週の土曜日には、あの場所に行ける。
それだけで、日曜の夜がほんの少し軽くなる。
自分の心に栄養をあげる日。女性用風俗が、私にとってそういう存在になった。これが今の私の、定期的な自分へのご褒美。
誰にも言えないけど。
でも、もうひとつ、気づいたことがある。それはまた次に書く。

