「寂しい」じゃなくて「触れられたい」この気持ちに名前をつけた夜

湯船に浸かりながら、ずっとごまかしていた言葉が浮かんだ。触れられたい。

友達と会っても消えない、「寂しい」では片づけられない感覚。

一週間サイトを開いて閉じてを繰り返していた理由が、この夜ようやくわかった。

名前がついたら楽になると思ったのに、余計に苦しくなった。

目次

お風呂の中で、ずっとごまかしていた言葉が浮かんだ

湯船に浸かりながら、ぼんやり天井を見ていた。

仕事終わりのお風呂。いつもならスマホで動画を流すのに、今日はなぜか何もする気になれなくて、ただお湯の音を聞いていた。

そしたら急に、胸のあたりがぎゅっと重くなった。

泣きたいわけじゃない。怒ってるわけでもない。なのにお湯の温かさが、何かを逆に際立たせるみたいで、しばらく動けなかった。

あ、私いま寂しいんだ。

そう思って、すぐ「違う」と打ち消した。ここ最近、何かあるたびに「寂しい」で片づけてきたけど、今日はそれでは済まなかった。

一週間、毎日女性用風俗のサイトを開いて閉じてを繰り返した。

セラピストという言葉で少しだけ呼吸が楽になって、口コミを読んで「この人も私と同じだ」と思って、でもまだ何も決められなくて。

そのあいだずっと自分に「なんでこんなことしてるんだろう」って問いかけてきたのに、答えは出なかった。出さないようにしていた。

お湯が少しぬるくなっていた。追い焚きのボタンに手を伸ばしながら、ずっと避けてきた言葉がぽっかり浮かんできた。

触れられたい。

誰かの体温を、肌で感じたい。

「寂しい」で逃げていた

ここ数ヶ月、自分の気持ちを全部「寂しい」にまとめていた。

友達に会えないから寂しい。彼氏がいないから寂しい。一人暮らしだから寂しい。そう言っておけば、自分でもなんとなく納得できた。「寂しい」って便利な言葉で、だいたいの感情をそこに放り込める。

でも今日、お湯の中で考えてしまった。

寂しいなら、友達とごはんに行けばいい。実際、先週の金曜に同期と飲みに行った。楽しかったし、帰り道もそんなに暗い気持ちにはならなかった。

なのに、家に帰ってドアを閉めた瞬間、またあの感覚。お腹のあたりがすっと冷えるような、胸に空洞ができるような。

友達と過ごしても消えないもの。それって「寂しい」とは違うんじゃないか。

認めたくなかった言葉を書く

シャワーヘッドからお湯が垂れる音だけが響く浴室で、ずっと見て見ぬふりをしてきた欲求と向き合ってしまった。

触れられたい。

体温がほしい。腕とか、背中とか、頭とか。誰かの手が私の身体に触れて、そこだけ温度が変わる、あの感覚。

書いている今も顔が熱い。こんなこと日記でも恥ずかしい。

でも、たぶんこれがずっと言葉にできなかったこと。

「寂しい」は人に言える。「最近寂しくてさー」って飲みの席で言えば、「わかるー」って返ってくる。カジュアルに消費できる感情。

「触れられたい」は言えない。重すぎるし、生々しすぎる。相手がどういう顔をしていいかわからなくなる。

だからずっと「寂しい」に翻訳して、自分をごまかしていた。

ふと、中学のとき飼っていた猫のことを思い出した。キジトラの女の子で、名前はミミ。

私がベッドに入ると必ずお腹の上に乗ってきて、そのまま丸くなって寝ていた。あのずしっとした重みと、毛の下から伝わるぬくもり。

今ほしいのは、たぶんあれに近い。人間に対してそんなこと思ってるのが情けないのはわかっている。

でもお風呂の中で正直にならざるを得なかった。お湯が温かいと、嘘がつけなくなる。

この一週間の行動と、今夜の気づきがつながった

お風呂から上がって、髪を乾かしながら、ここ一週間の自分の行動を思い返していた。

毎日公式サイトを開いて閉じて。セラピストという呼び方に少しだけ安心して。体験談を読んで胸がざわついて。

あれは全部、「なんとなく気になったから」じゃなかった。

私は「寂しいから話し相手がほしい」わけじゃない。「触れられたい」のだ。

だからマッチングアプリでメッセージのやり取りをしても満たされなかったし、友達と長電話しても足りなかった。言葉じゃ届かない場所に飢えがある。

だからあのサービスが気になっていた。

文字にしたら、腑に落ちてしまった。ストンと、お腹のあたりに何かが落ちた感覚。

でも腑に落ちることと、受け入れることは別の話で。

名前がついたら、余計に苦しくなった

「触れられたい」って自覚したら、楽になるかと思った。自分の気持ちがわかったんだから、少しはすっきりするかもしれないって。

逆だった。

ずっと「寂しい」でぼやかしていた輪郭が、急にくっきりしてしまった。

自分が何を求めているか、鮮明にわかってしまったら、それが満たされていないことがもっとはっきりする。

ドライヤーを終えて部屋に戻る途中、窓の外を見たら、道路の向こうにあるマンションの部屋にオレンジ色の灯りがいくつか点いていた。

あの灯りのどれかには、誰かと一緒にいる人がいるんだろう。テレビを見ながら、足をくっつけたりしているんだろう。

今まではそういうことをぼんやりとしか思わなかったのに、今日は胸のあたりがぎゅっと痛んだ。あれが欲しい、と思ってしまった自分が嫌だった。

スマホの画面を暗くして

布団に入って、スマホを開きかけてやめた。

またサイトを開いたら、今夜はたぶんコースとか料金のページまで見てしまう。自分の欲求に名前がついたことで、調べる行為の意味が変わってしまった。

「ちょっと気になるから見てるだけ」はもう通用しない。触れられたいから見ている。それが自分でわかってしまった。

スマホの画面を暗くして、枕の横に伏せた。

こんなことを日記に書いている自分が、正直いちばん恥ずかしい。「触れられたい」なんて、書かなきゃよかったかもしれない。でも書いてしまった。消せない。消したくない、のかもしれない。

ここからどうするかは、全然わからない。自分の欲求がわかっただけで、それを満たしていいのかどうかは別問題だし、「そこまでして男の人に触れたいの?」って、もう一人の自分がずっと問いかけてくる。その声はまだ答えられないまま。

ただ、一つだけはっきりしたことがある。

私が抱えているこの感覚は、「寂しい」では足りなかった。もっと具体的で、もっと身体的で、もっと切実なものだった。

名前をつけたからといって解決はしない。むしろ今夜は、名前がついたぶんだけ苦しい。

でも、名前のないまま抱えている苦しさよりは、まだましな気がする。たぶん。

明日の朝、いつも通り会社に行く。いつも通り「おはようございます」って口角を上げる。誰にも気づかれない。それでいい。

でも私だけは、もう知ってしまった。

あのサービスの料金ページを本当に開いたのは、この夜から数日後のことになる

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